用語集

板鍛造・プレス加工に関する用語集

板鍛造・プレス加工技術.comが提供している板鍛造・プレス加工に関する用語について紹介しています。

あ行

  • 圧縮
    圧縮とは、圧縮加工(鍛造加工)を指す言葉であり、プレス加工のうちの一つです。プレス機を用いて、 被加工材に熱を加えながら強い圧力によって圧縮することで変形させる手法です。 圧縮加工の中にも複数の方法があり、金属を削らず、叩いて伸ばしていく「スウェーキング」、 マーキングを行う「刻印加工」、硬化のような表裏で異なる模様を持った金属に加工する「コイニング」、 据え込み加工と呼ばれる棒状の材料を軸方向に圧縮成型させる「アプセッティング」などが 圧縮加工の主な種類です。 主に、自動車のエンジンやトランスミッションなどの機構部品などの成型に用いられています。
  • 板鍛造
    板鍛造とは、「板金加工」と「鍛造加工」を組み合わせた加工方法のことを言います。 板金加工では、素材と加工前の製品の板厚にあまり変化はありませんが、板鍛造加工は、その板金加工に鍛造要素を取り込むことで板厚の制御(増肉、減肉)を行います。 板鍛造のメリットとしては、加工工程の削減、歩留まりの改善が可能な点です。従来、板厚の調整のための切削工程が必要だったところ、板鍛造加工なら切削加工レスが実現可能となるためです。 一方、板鍛造は金型に大きな負担がかかるため、高精度な金型と高剛性のプレス機が必要となります。

か行

  • カシメ
    カシメ(英:Caulking)とは、金属の塑性変形を利用して複数の部品(特に板物)を接合する技術の一つです。漢字では「加締め」と書き、ハトメやリベットと呼ばれることもあります。アルミ等溶接に不向きな金属材料の接合も可能で、溶接よりも短い時間で加工できることから、特に精密板金で使用されることが多いです。 カシメは6種類あり、 ①板の片側からしか加工ができない場合に採用されるブラインドリベット ②リベットを押すことで強固に接合できるプレスカシメ ③回転しながらゆっくり加圧することで高精度部品のカシメを可能にするスピンカシメ(巻き締めカシメ)のほか ④ハゼ折りカシメ ⑤スポットカシメ ⑥コーナーカシメ があります。カシメに用いるのがカシメ機(リベッター)という機械で、原理は通常のプレス機と同様です。カシメは、橋梁や船舶、航空機といった重厚長大のものから、調理器具や衣類等の日用品まで幅広く使用されている接合技術です。
  • カチオン電着塗装
    カチオン電着塗装(英:Cationic Electrodeposition Coating)とは、水溶性の塗料を溶かした槽に製品を浸漬させ、電気の力を使って塗膜を形成させる塗装の一種です。 特徴としては、 ①メッキに比べ、複雑形状であってもピンホールがなく均一で密着性の高い表面処理を施すことが可能である ②亜鉛ニッケルメッキや合金メッキに匹敵する優れた耐食性を持っているものの、それらに比べコストが安い という2点が挙げられます。その一方で、 ①電気を利用しているため、電気が届かない弱電部と強電部とで多少膜厚にばらつきが生じる ②耐候性が劣る というデメリットもあります。一般にカチオン電着塗装は水溶性塗料を使用するため、大気汚染の原因とされるVOC(揮発性有機化合物)の発生が少なく、環境にやさしい塗装方法として近年注目を集めています。
  • クランクプレス
    クランクプレス(英:Crank Press)とは、最も一般的に使用されているプレス機で、動力である弾み車の回転運動を往復運動に変換する機構に、偏心軸とコネクティングロッドを利用したものになります。スライドを駆動させる機構がクランク機構になっており、これでラムを上下させ加圧します。打ち抜き加工・曲げ加工・絞り加工・鍛造加工等ほとんどの塑性加工が可能である点が特徴です。特に自動車部品や電気・電子部品の量産で使用されることが多いです。似たようなプレス機に、リンクプレスとナックルプレスがあります。前者は、加工速度がやや劣るものの成型性や金型寿命の向上が期待でき、後者は、下死点において一時的に停止するナックル機構を備えていることから、スプリングバック対策が重要な場合に採用されるケースが多いです。
  • クリアランス
    ここでは、プレスの抜き加工のクリアランスについて解説いたします。 クリアランス(英:Clearance)とは、抜きパンチの刃先径とダイの刃先径の寸法差のことを指します。ダイクリアランスや抜きクリアランスと呼ばれることもあります。抜き加工において非常に重要な意味を持っており、その過大・過小により品質に大きな差が出るため、適正クリアランスで加工を行うことが大切です。一般には、せん断面が板厚の1/3~1/2程度で均一だと適正であると評価されます。クリアランスが過小の場合、①二次せん断によりヒゲ状のバリが発生しやすい、②抜き圧力が大きくパンチ・ダイの刃先に過重な負荷がかかるためチッピングが起こりやすいというデメリットがあります。他方、過大な場合は、バリやダレ、抜けゾリが大きくなるため製品精度が不安定になってしまいます。
  • コンデンサ式溶接機
    コンデンサ式溶接機(英:Condenser Welding Machine)とは、電気部品のコンデンサを利用してスポット溶接(抵抗溶接の一種)を行う溶接機です。コンデンサ式溶接の原理は、電極を通じてコンデンサに蓄電された大電流を瞬時に放出することで、母材に対して電気抵抗によるジュール熱を発生させることで接合するという方法です。特徴として、①溶接時間が短いことから薄板や小物部品の溶接に向いている、②一般には溶接が難しいとされるアルミや銅の溶接も無理なく可能である、③パルス幅が小さく母材への熱影響を最小限に抑えられるため綺麗に仕上げることができる(外観部品に向いている)、④融点の高い非鉄金属や異種金属の溶接も可能といった点が挙げられます。
  • 加工硬化
    加工硬化とは、金属に応力(内部に生じる歪み)を加えることで硬さが増す現象であり、金属の塑性変形によって生じます。 また、金属の中でも、ステンレスを中心に加工硬化は顕著にみられます。 加工による金属硬化は、塑性変形の際に金属を構成する原子の配置が変化することで生じます。 格子状に並ぶ金属原子は、力を加えることで各原子の位置関係が変化しますが、ある程度の力であれば力を取り除くと元の原子配列に戻りますが、一定以上の力を加えると、原子の配列は乱れ(転移)、元の形状に戻らなくなります。 この転移の影響で金属の硬さが増す現象を加工硬化と呼びます。

さ行

  • サーボプレス
    サーボプレス(英:Servo Press)は、加圧部の動きをNCとサーボモータで制御することにより難加工材や複雑形状のプレスも得意とするプレスユニットです。一般的な油圧式のプレスは、加圧速度の調節や停止位置等の制御がやや難しい傾向にあります。例えば複雑な金型を用いてプレス加工を行う場合、加圧速度が一定だと、部位により圧力の差が生まれてしまうことで特定箇所が異常に加圧され、焼き付き不良を起こす可能性があります。従来は、その対策として加圧速度を落として慎重に加工していたことから、生産効率の低下を招いていました。しかし、サーボプレスは、加圧速度や圧力等を数値制御できるのに加え、サーボモータでラム(駆動部)の動きを制御できることから、マグネシウム等の難加工材や複雑形状であっても無理なくプレスすることが可能です。サーボプレスで複雑な金型のプレス加工を行う場合は、途中まで高速でパンチを駆動するものの、下死点直前で減速するようにコントロールします。これにより、材料歩留まりと生産効率の両立が可能になります。
  • ショックアブソーバー(ダンパー)
    ショックアブソーバー(英:Shock Absorber)とは、自動車のサスペンション機構の構成部品で、スプリングの余計な動きを抑制する役割を果たします。ダンパーや緩衝器と呼ばれることもあります。自動車が走行中に路面の凹凸から受ける衝撃やコーナリングの際の加重は、スプリング(バネ)に伝わり、スプリングが伸び縮みすることにより衝撃を吸収します。スプリングは一度衝撃を受けるとしばらく伸縮動作が続いてしまいますが、これを抑えるのが各輪1本ずつ装着されているショックアブソーバーです。スプリングの伸縮を抑える力を減衰力と言いますが、この減衰力の発生方式の違いによりショックアブソーバーは2種類に分けることができます。一つは単筒式のもので、故障しやすいものの構造が単純で放熱性に優れているためスポーツカーや競技用の車両に使用されます。もう一つは複筒式で、故障しにくく多くの大衆車に使用されています。
  • しわ押さえ力
    しわ押さえとは、板材成型においてダイと対向して板材の反対側に配置される工具を指します。 金型に使用される材料を抑え、材料の縮み、フランジ変形などの歪みにより発生するしわを抑えるために 使用されます。また、しわ押さえには2つの方法があります。 ①固定しわ押さえは、フラットタイプ・テーパタイプの2種類があり、フラットタイプの材料押さえ部分は 被加工材の板厚より大きめの隙間とする一方、テーパタイプは絞り進行に伴うフランジ淵の板厚増加をテーパ部で 吸収することで被加工材にかかる負荷を一定にすることが可能です。 ②可動しわ押さえは、しわ押さえ面を直接加工材に押し付けて行う方法です。 しわ押さえでの圧する力は弱すぎばしわが発生してしまい、強すぎるとわれが発生してしまいます。 しわ押さえ圧力はダイ、しわ押さえ面の面粗さ、潤滑油の状態などで変化するので、その時の状態に合わせて 圧力を調整することが必要です。
  • ステアリング
    ここでは、自動車のステアリング機構について解説いたします。 ステアリング(英:Steering)とは、乗り物の進行方向を任意に変えるための舵取り装置のことで、自動車においては通常ハンドル(ステアリングホイール)のことを指します。以前の自動車は、車輪が軽量であったため運転者の腕力だけで車輪の向きを変えていました。しかし現代の自動車は、車体の重量が増し操舵に大きな力が必要なことから、エンジンによる油圧や電動モーターでハンドリングを軽くするためのパワーステアリング(パワステ)を備えています。ステアリングは、厳密にはステアリングホイールと中心部のステアリングシャフトから成り、ステアリングホイールはグリップ部分のリムとハブ、そして両者を繋ぐスポークで構成されています。
  • スプリングバック
    スプリングバッグとは板金加工・プレス加工などで鋼材を曲げた際、元の形に戻ろうとする現象・力です。 鋼材を曲げた際に、外側は引っ張られる力が働き、内側は圧縮される力が働きます。 スプリングバッグの発生要因として、中央付近の引っ張り・圧縮の影響が小さいニュートラルエリアが元の 形に戻ろうとするためです。 また、大きな材料ほど、曲げる角度が急なほど、スプリングバッグは強くなっていきます。 対策として、設計通りに曲げるために、所定の曲げ角度より大きく曲げるオーバーベンドによって対応。 他にも、一回のストロークで二段階の曲げ加工を行う二段曲げ法、底部隅にストライキングと呼ばれる若干 の出っ張りを設け、スプリングバッグを防止する方法などがあります。
  • 反り
    ここでいう反りとは、パンチプレスによる打ち抜き加工の際に、被加工材が、打ち抜く方向とは逆方向に反り上がり平面度の変化が起こってしまうことを言います。 反りは、パンチが被加工材を打ち抜く際に、パンチを打ち抜くせん断力と同時に、曲げ応力が発生することにより起こります。 また、反りの大きさは、刃先の摩耗状態やクリアランスに大きさによっても左右されます。 反りは製品の品質に影響するため、打ち抜き加工を行う際は、反り対策を施す必要があります。 具体的な対策としては、以下のようなものがあります。 ・ダイにテーパ加工を施す ・強い力で板を抑えることで、曲げ応力を押え込む ・刃先の研磨を行い、鋭利な状態を保つ ・適正なクリアランスにする
  • 塑性加工
    塑性加工とは、金属材料に大きな力を加えて変形させ、成型する加工方法のことを言います。 塑性加工は、金属の性質である塑性(力を加えて変形させたのち、力を取り去っても変形したままになる)を利用した加工方法であることからその名前がついています。 塑性加工の種類には、以下のようなものがあります。 ・鍛造加工 ・圧延加工 ・プレス加工 ・押出し加工 ・転造加工 塑性加工の利点としては、 ・加工時間が短い ・材料歩留まりが良い という点が挙げられます。塑性加工では金型を利用することが多く、加工時間が短いことから大量生産に向いています。また、切削加工のように切粉が出ることがないため、材料歩留まりが良いという点も塑性加工の特徴です。 一方で、塑性加工には、 ・イニシャルコストが高い ・高い精度の製品には2次加工が必要 という側面もあります。
  • 成型荷重波形

    成型荷重(英:Forming Load)は、プレス成型機でワークを任意の形状に変形させるために必要な負荷のことを指します。翻って、プレス成型機または金型への負荷のことも成型荷重と呼ぶことがあります。

    成型荷重波形(英:Forming Load Waveform)は、プレス成型加工プロセスにおける成型荷重の変化を波形状に表した図になります。この波形監視データは、
    ・トライ時の成型荷重にもとづく量産設備の適切な選定
    ・量産時におけるプレス成型金型の二重打検知
    ・偏心荷重に依るパンチのカジリ
    ・加工中の過負荷監視
    等、プレス加工においてトライ~量産まで様々な段階・目的で利用することができます。

  • 精密プレス加工
    精密プレス加工とは、プレス加工の中でも精度の高い製品の加工を行うものを言います。 精密プレス加工により、精度の高い部品の大量生産が可能となり、精密部品加工の生産性が向上します。 精度の高い製品のプレス加工を行うには、精度の高い金型が必要不可欠です。 そのため、精密プレス加工には、精度の高い金型製造の技術、ノウハウが重要です。 精密プレスに使用される金型には、耐摩耗性が求められるため、硬度の高い材料が用いられます。 そこで、硬度の高い材料の精密加工技術を駆使して、金型を製作します。 放電加工や、研削加工などを用いて、精密な金型を製作することで、精密プレス加工が可能となります。
  • 絞り加工
    絞り加工とは、一枚の板材に、パンチを押し付け圧力をかけることで、凹状の容器を成型する加工方法を言います。 絞り加工は、製品になるまでに溶接や切削加工を必要としないため、工数の削減が可能で、大量生産に向いているという特徴があります。また、加工硬化が大きく、薄板でも硬度の高い製品が仕上がるため、軽量化にも寄与します。 絞り加工には、形状による種類として、以下のものがあります。 ・円筒絞り加工 ・角筒絞り加工 ・円錐絞り加工 ・角錐絞り加工 ・球頭絞り加工 他にも絞り深さの分類として深絞り加工などもあります。

た行

  • ダイ
    ここでは、プレス加工で使用されるダイについて解説いたします。 ダイ(英:Die)は、被加工材を目的の形状に塑性変形させるための型のことを指します。プレス加工や鍛造加工では雌型とも呼ばれ、パンチ(雄型)と組み合わせて使用します。プレス金型には、せん断加工のための「抜き型」、曲げ加工のための「曲げ型」、絞り加工のための「絞り型」等様々な用途のものがあります。プレス加工において品質の良い製品を製造するためには、パンチとダイの位置関係の精度が非常に重要になってきます。パンチがダイに押し付けられた際の隙間をクリアランスと呼びますが、このクリアランスが過大ですとダレやバリが大きくなってしまいます。逆にクリアランスが過小の場合も、金型への負担が大きくなり金型寿命が悪化してしまいます。したがって、金型設計の際にはクリアランスの適正値を充分に考慮する必要があります。
  • ダブルクランクプレス
    ダブルクランクプレス(英:Double Crank Press)とは、2つのクランク機構を備えたクランクプレスです。 クランクプレスとは、最も汎用的に使用されているプレス機で、動力である弾み車の回転運動を往復運動に変換する機構に、偏心軸とコネクティングロッドを利用したものになります。クランクプレスは、クランク機構の数から①シングルクランクプレスと②ダブルクランクプレスとに分けられます。両者の最大の違いは、②の方が偏心荷重の許容範囲が広く、精密部品の順送プレス加工に向いているという点にあります。偏心荷重とは、プレス機スライドの中心と金型の荷重中心がずれている状態を指します。①の場合、ボルスタプレートとスライドの平行が崩れ金型寿命を短くしてしまうことがあります。そのため、金型の取り付けた方の工夫や性能の高いプレス機を選定する必要があります。
  • ダレ(抜きダレ)
    ここでは、プレス加工におけるダレもしくは抜きダレについて解説いたします。 ダレ(英:Shear Droop)は、プレス加工機でせん断加工をした場合に、切断面に発生する引張力で被加工材が引っ張られることで表面が滑らかなR形状になる現象を指します。抜きダレと呼ばれることもあります。ダレの大きさや形状は、パンチとダイのクリアランスや被加工材の材質や加圧速度によって変化します。 せん断加工の切断面は、上から①ダレ、②せん断面、③破断面、④バリという4層構造になります。せん断面は、被加工材にパンチがめり込むことによってできる光沢がある面で、細かい縦筋が確認できます。破断面(クラック)は、せん断面に比べ粗い表面で、被加工材をむしり取ったような外観をしています。最下層のバリ(かえり)は、ギザギザ形状になっており基本的には後工程でバリ処理が必要になります。
  • タンデムプレス
    タンデムプレス(英:Tandem Press)とは、プレス機1台に1つの金型をセットし、そのプレス機を複数台並べた製造ラインのことで、広く使用されているプレスラインです。 単にタンデム、略称としてTDMと呼ばれることもあります。それぞれのプレス間には成型途中のシート材の取り出し及び投入をする搬送装置があり(手作業でやる場合もあります)、成型と搬送を流れ作業的に行います。 搬送装置としては、汎用ロボットや専用のプレス間搬送装置、ガントリーローダー等が利用されています。 タンデムプレスは、順送プレスやトランスファープレスが適用できないような少量多品種や大物の加工で活躍します。自動化ラインではあるものの、実質的には単工程加工を並べただけで型や設備にトランスファー機構を持たないことから、加工工程の少ない単純形状や小ロット生産に向いています。トランスファープレスほどの生産性はありませんが、型や配置を変えるといったフレキシブルな調整が可能です。
  • トランスファープレス
    トランスファープレス(英:Transfer Press)とは、プレス加工の中では順送プレスに次いで生産性が高いプレスラインです。略称として、TRFと呼ぶこともあります。 順送プレスに比べ製品形状の自由度が高く、深絞りのプレス加工にも向いています。複数の工程を繋げて加工する点は順送プレス加工と同様ですが、各工程は単工程で、プレスの1サイクルが終わると全工程の製品をグリップして一つ後の工程へ自動で移動させます。このため、各工程ごとに製品を送るための専用の搬送機構が搭載されています。製品送り用のフィンガーがついており、これが全工程の製品を同時につかんで、次の工程へ製品を移します。 トランスファープレス用金型を設計する際は、金型を一定ピッチで配置し、かつ金型のダイハイトを統一しなければいけないため注意が必要です。また、前後の荷重バランスを上手く取りながら加工する必要があり、金型設計・製作には高い技術力が求められます。
  • 単発プレス加工
    単発プレス加工とは、一つの金型で単一の工程のプレス加工を行う単発金型を用いた加工のことを言います。 単発金型を順送金型(一つの金型で複数工程のプレス加工可能)を比較した際の特徴は以下になります。 ・製造コストが低い ・サイズの大きな製品のプレス加工が可能 単発金型は順送金型に比べ製造コストを低く抑えることが可能なため、試作や少量生産に用いられることが多いです。 また、単発プレス加工は、順送プレス加工では対応しきれない大きなサイズのプレス加工も可能です。 大きいサイズで複数工程を必要とする製品の大量生産を行おうとすると、単発プレス機を複数用いて対応することになります。 ただし、順送プレスと違い、各工程で材料を機械から取り出す必要があるので、人手が必要となり生産性が低くなってしまいます。 そこで、各工程の材料の入れ替えをロボットが行うこと(ラインペーサープレス)で省人化、無人化を図るなど生産性を向上させる工夫がなされています。
  • 超ハイテン材
    超ハイテン材とは、引っ張り強度が980MPa以上の鋼板のことを言います。 一般的に、引っ張り強度が340〜790MPaとされる高張力鋼板(ハイテン材)より引っ張り強度が高い鋼板として開発されました。 ハイテン材同様に、自動車の部品に使用され、車体の軽量化に寄与し、燃費向上に大きな役割を果たしています。 しかし、超ハイテン材は、その強度と相反する形で成型できる形状には制約があり、複雑な形状の部品には高度な成型技術が必要となります。 そのため、加工しやすい超ハイテン材の開発や超ハイテン材の加工技術の開発が進められています。
  • 鍛造プレス
    鍛造プレスとは、プレス機の中でも、主に冷間鍛造を行うための機械のことを言います。 冷間鍛造は常温近く厚い金属の成型をする必要があるため、鍛造プレスには、高い機械強度が求められます。 鍛造プレスは、ラムをスライドさせ、ラムに取り付けられた金型を材料に強い力で押し付けることで成型します。 そのラムのスライドの仕組みによって、鍛造プレスには以下の種類があります。 ・機械鍛造プレス:フライホイールの回転運動でラムをスライド →加工スピードが速く、生産性が高い ・油圧鍛造プレス:油圧でラムをスライド →油圧の調整で任意の位置でラムを止めることができるため、試作に向く ・鍛造サーボプレス:サーボモータでラムをスライド →加圧力、加圧量の精密な調整が可能 鍛造では、金型を押し付ける時間が長いほど、安定した成型が可能になるため、それぞれの鍛造プレス機では、金型の加圧時間が長くなるように調整されています。
  • 電着塗装
    電着塗装とは、水溶性の塗料が入った槽に被塗物を浸漬させ、被塗物を電極として電気を流すことで塗装を行うことです。 電着塗装は自動車のボディーの下塗りなどに用いられる塗装方法です。 電着塗装は、導電部分には均一に反応が起こるため膜厚が均一に仕上がり、使用塗料の95%以上を塗膜化でき効率的な塗装方法です。 しかし、設備が大型化しやすく、設備コストがかかってしまい、不導体には塗装ができないという短所もあります。 そのため、導体で大量生産に向いた塗装方法だと言えます。 電着塗装には、カチオン電着塗装とアニオン電着塗装があります。 両者の違いは、電極に違いがあります。カチオン電着塗装では、被塗物を陰極として用い、アニオン電着塗装では、被塗物を陽極として用います。 自動車の下塗りにはカチオン電着塗装が用いられています。 カチオン電着塗装には、防食性が高いという利点があります。

な行

  • ナックルプレス
    ナックルプレス(英:Knuckle Joint Press)とは、最も汎用的なプレス加工機であるクランクプレスより押さえ時間が長いという特徴を持つプレス加工機です。 クランクプレスは、動力である弾み車の回転運動を往復運動に変換する機構に、偏心軸とコネクティングロッドを利用したもので、下死点に達するとスライドがすぐに戻ります。ただ、プレス加工では下死点で押さえ時間をやや長くもつと形状安定性が増すという特性があります。これを利用したのがナックルプレスで、下死点直前で加圧速度を緩め、押さえ時間を長くしています。これにより、潰しを含んだ加工やスプリングバック対策が可能になります。ストローク長さが短い、クリアランスが大きくなりやすいという欠点もあります。
  • 抜き加工
    抜き加工とは、一般的に、プレスにより薄い金属の板材を打ち抜く加工のことを言い、せん断加工とも呼ばれます。 抜き加工を広義でとらえた場合、レーザーやワイヤーカットなどによるせん断も抜き加工ということもあります。ここでは、プレスによる抜き加工の用語を解説いたします。 抜き加工は、プレス加工機やタレットパンチプレス機を用いて加工が行われます。 抜き加工の種類は5つあります。 ・打ち抜き加工:板材から製品となる部分を打ち抜く ・穴抜き加工:板材から不要な部分を打ち抜く ・切り込み加工:一部はつながったままで、板材に切り込みを入れる ・半抜き加工:穴抜きの途中で止めることで、凸形状を作り出す ・縁切り加工:縁を切り抜き形状を整える 抜き加工は、スクラップが少なく歩留まりが高い上、安定した精度で量産加工ができるという特徴がございます。

は行

  • ハイテン鋼板(高張力鋼)
    ハイテン鋼板(英:High-tensile Steel Plate)とは、普通鋼よりも軽量で、引張強度・溶接性に優れた鋼材になります。 ハイテン鋼は定義が決まっており、日本では引張強度が340MPa~790MPaの鋼材です。なお、980MPaを越えると超高張力鋼と呼ばれます。JIS規格としては、JISG3106(溶接構造用圧延鋼板)にあたります。ハイテン鋼板には、①薄肉化が可能②耐食性が高いという2つの特徴があります。ハイテン鋼板は、一般鋼材に比べ高い強度を備えているため、板厚を薄くし軽量化を図ることも可能です。昨今では、特にEVの普及により部品の軽量化が叫ばれている自動車業界で注目を集めています。さらに耐食性が高いことから、プラント設備や河川の鋼構造物の材料としてしばしば使用されています。
  • バリ(抜きバリ)
    ここでは、プレス加工におけるバリもしくは抜きバリについて解説いたします。 バリ(英:Burr)は、プレス加工機でせん断加工をした場合に、ギザギザ形状が生じる現象のことを指します。かえりや抜きバリと呼ぶこともあります。バリの大きさや形状は、パンチとダイのクリアランスや被加工材の材質・加圧速度によって変化します。 せん断加工の切断面は、上から①ダレ、②せん断面、③破断面、④バリという4層構造になります。ダレは、切断面に発生する引張力で被加工材が引っ張られることで表面が滑らかなR形状になったものです。せん断面は、被加工材にパンチがめり込むことによってできる光沢がある面で、細かい縦筋が確認できます。破断面は、せん断面に比べ粗い表面で、被加工材をむしり取ったような外観をしています。 切断面は、せん断面が板厚の1/3~1/2程度、かつ均一になることが理想です。ダイとパンチの隙間であるクリアランスが過大だと大きなバリが発生しやすく、逆に過小であっても二次せん断面ができヒゲ状のバリが生じます。バリは相手部品との嵌め合い精度や品質・安全性に影響を与えるので、プレス加工後にバリ取り工程が必要になります。
  • パンチ
    ここでは、プレス加工で使用されるパンチについて解説いたします。 パンチ(英:Punch)は、被加工材を目的の形状に塑性変形させるための型のことを指します。プレス加工や鍛造加工では雄型とも呼ばれ、ダイ(雌型)と組み合わせて使用します。プレス金型には、せん断加工のための「抜き型」、曲げ加工のための「曲げ型」、絞り加工のための「絞り型」等様々な用途のものがあります。プレス加工において品質の良い製品を製造するためには、パンチとダイの位置関係の精度が非常に重要になってきます。パンチがダイに押し付けられた際の隙間をクリアランスと呼びますが、このクリアランスが過大だとダレやバリが大きくなってしまいます。逆にクリアランスが過小の場合も、金型への負担が大きくなり金型寿命が短くなってしまいます。したがって、金型設計の際にはクリアランスの適正値を充分に考慮する必要があります。
  • ブランク加工
    ブランク加工(英:Blanking)とは、板材を型を用いて抜き落とし、輪郭形状を作る加工方法です。外形抜き加工もしくはブランキングと呼ぶこともあります。 ブランク加工では、ブランクを作るために材料は少し大きいものを用意します。その差分を「さん」と呼ぶことが多いですが、この「さん」があまりに小さいと、パンチ・ダイの摩耗が早まり、バリの発生が懸念されます。 ブランク加工におけるブランク配列のことをブランクレイアウト(板取り)と呼ぶことがあります。ブランクレイアウトの工夫により、材料歩留まりを改善することができます。
  • プレス加工
    プレス加工(英:Press Working)とは、鍛造や製缶板金と同じ塑性加工の一つです。プレス加工の特徴は3つあります。1つ目は、金型製作と量産ライン立上げにより月間数千~数十万の量産が可能という点です。初期費用として金型製作代・製作期間がかかるものの、非常に高い生産効率で小物・薄物でも量産することができます。2つ目は、切削加工と異なり材料歩留まりが高い点です。塑性加工全般に言えることですが、機械加工のように切り粉(スクラップ)が出るわけではないので、材料代を抑えることができます。3つ目は、形状自由度が低いという点です。金型を利用した塑性加工という特性上、材質や寸法、公差によっては希望の形状を実現できない可能性があります。 プレス加工は加工方法により分類することができ、①せん断加工②抜き加工③曲げ加工④絞り加工という4つが主に代表的です。さらに、プレスラインでも分類することができます。1つ目は、多品種少量の部品に関して作業者が手作業で被加工材をセットし、一工程ずつプレスしていく「単発プレス」。2つ目は、コイル状の被加工材をセットし、複数のプレス工程を順送りで行う「プログレッシブプレス」で、最も生産性が高いラインになります。3つ目は、単発プレスと順送プレスの長所を取り入れて自動での連続加工を可能にした「トランスファープレス」です。
  • プログレッシブ加工(順送プレス加工)
    プログレッシブ加工(英:Progressive Processing)とは、一つの金型の中に複数の工程を等ピッチに配置するプレスユニットの一種です。順送プレスや略称としてプログレ、PRGと呼ばれることもあります。 プログレッシブ加工では、加工自体は一工程であるため、一度プレスをしたらコイル材を工程間ピッチ長さで少し送り、再度プレス、同様にまたコイル材だけを順送りしていくことで製品を加工することができるというものになります。 複数の工程を経るプレスラインですが、実際はブランク材を一定速度で進めていけばよいだけの加工なので、専用自動ラインを除くと加工速度は最も早く生産性も非常に高いものになります。 ただし、複数工程が同一金型内に等ピッチで配置されているため、金型が複雑かつ高価になってしまうというデメリットがあります。
  • 深絞り加工
    深絞り加工とは、絞り加工の中でも、製品の直径以上に深い絞りを形成するための加工を言います。 プレス加工の中でも絞り加工は、設計が甘いと割れやしわが発生してしまうことがあるなどの理由から、難易度の高い加工と言われますが、深絞り加工はさらに難易度が高いです。 そのため、精度の高い深絞り加工を行うには、金型設計などの高い技術が必要となります。 深絞り加工は、難しさがある一方で、大量生産品に適していたり、加工硬化が大きく、薄板でも硬度が高い製品が仕上がるため軽量化に繋がるなどの特徴があります。

や行

  • 油圧鍛造プレス
    油圧鍛造プレスは、ラムを油圧によってスライドさせる鍛造プレスのことを言います。 鍛造加工を行うプレス機では、ラム(スライド)に金型が取り付けられ、ラムと金型が往復運動することにより、材料に金型を押し付け成型していきます。 油圧鍛造プレスは、油圧バルブのコントロールにより、ストロークの長さや加工速度、加圧力を自由に変更可能なため、試作や材料の変形試験にも使うことができます。 一方、油圧鍛造プレスは加工速度(1~10mm/s)が遅いという短所もあります。

ら行

  • ラインペーサープレス
    ラインペーサープレスとは、ロボットラインとも呼ばれ、各工程で独立した複数のプレス機間をロボットが搬送し、ライン加工を行うことを言います。 ラインペーサープレスはいわゆる単発型プレス機を並べたものになります。 単発金型は、順送金型と比較して、製造コストが低く、順送金型では対応できない大きなサイズでも加工可能な一方で、複数工程が必要な場合は人手が必要です。 しかし、ラインペーサーは、ロボットが単発型プレス機間の搬送を行うため人手が必要ありません。 そのため、大きなサイズの製品を加工する必要がある場合には、ラインペーサープレスによって、低コストで生産性高く加工を行うことが可能になります。
  • 冷間鍛造
    冷間鍛造(英:Cold Forging)とは、金属材料を熱を加えずに塑性変形させる加工技術です。冷間鍛造の特徴は、常温の金属材料を加工するため材質や形状によっては切削に匹敵する精度を出すことが可能というメリットはあるものの、大物や長尺物の加工には向かないという側面もあります。鍛造加工には、ワークを再結晶点以上に加熱して柔らかくしてから加工する熱間鍛造という加工法もあります。熱間鍛造は、加熱・冷却が必要になることから歪み対策が必要で、高い精度を出すのは難しいという欠点がありますが大物部品の鍛造を得意としています。冷間鍛造・熱間鍛造いずれも塑性加工特有の「加工硬化」により製品の耐久性・耐衝撃性を向上させることができます。 一般に、チタンのように硬く塑性の小さい金属材料は冷間鍛造には不向きであるとされています。チタンやステンレス鋼、クロム鋼といった高硬度材を冷間鍛造で加工するには高い設計技術力が要求されます。
  • 冷間鍛造
    冷間鍛造とは、材料に熱を加えることなく、常温環境(もしくは常温に近い環境)下での鍛造加工のことを言います。鍛造加工とは、金型などを用いて、材料に圧力を加え、金属の塑性を活かし変形させることで目的形状に成型する加工方法です。 鍛造加工による製品は、切削加工によるものと比較して、ファイバーフローとよばれる「鍛流線」が保存されるため、強度が高いという特徴があります。 また、鍛造加工には、材料に熱を加えて加工を行う熱間鍛造もありますが、冷間鍛造は熱間鍛造に比べ、精度の高い生産が可能です。しかし、常温の金属は硬く、成型には大きな圧力が必要となるため、大きな製品には向かないという側面もあります。 そのため、冷間鍛造は小さい部品の大量生産に向く加工方法と言えます。 なお、冷間鍛造加工の中でも特に高精度が求められる製品の加工については、精密冷間鍛造という加工方法が用いられます。 精密冷間鍛造による加工で、精度の高い製品の大量生産が可能になったり、切削加工による仕上げが必要なくなるなどのコストダウンに繋がるなど、精密部品加工の生産性の向上につながります。 鍛造加工は、機械に取り付けられたパンチで材料を押し込み、ダイと挟み込むことで成型するため、精密冷間鍛造では、パンチとダイから成る金型の精度が加工品の精度を左右する重要な要素です。 そのため、精度の高い冷間鍛造を行うには、精度の高い金型を製造する技術が不可欠となります。

A ~ Z

  • n値(加工硬化指数)
    n値とは、金属材料の持つ「加工硬化」の大きさを見る指標の一つです。 加工硬化とは、金属に応力(内部に生じる歪み)を加えることで硬さが増す現象であり、 金属の塑性変形によって生じます。特にステンレスは、金属の中でも、顕著な加工硬化が見られます。 加工硬化の度合いを表すn値(加工硬化指数)は0~1の間で表されます。 0に近くなるほど、加工硬化の程度が小さく、1に近い方が力を加えた際の加工硬化の程度が大きいことを示しています。 切削や研削、研磨の世界では、力を加えるほどに硬化する材料は加工のしにくい素材として扱われますが、 その一方で、プレス加工の世界では張り出し成型のしやすい材料として使用されます。 ただし、材料が脆くなり粘りが低下することで耐久性の減少を招く点には注意が必要です。
  • r値 (ランクフォード値)
    r値とは、引張りによる金属材料の変形の程度を表す数値です。 r値が大きいほど板の厚みの変化が少なく、板幅の方向での寸法の変形が大きいことを表します。 (=深絞り性がよく、絞り加工に最適な材料と言えます。) 金属材料を引張る際、板幅と板厚は均等に減少することは基本的にありません。 ほとんどの場合、板幅減少が大きく板厚減少が小さくなる、又は板幅減少が小さく板厚減少が大きくなります。 金属材料には板厚方向または板幅方向のいずれかに変形しやすい性質を持っています。 そしてr値が小さい場合は、板厚の変化が大きく、幅の変形が少なくて済む材料と言えます。
  • SE検討
    SE検討(英:Simultaneous Engineering)とは、お客様が提示された仮図面・検討図に対してシミュレーション段階から成型性を検討する活動のことです。従来の製品開発から量産に至るまでのプロセスでは、開発・仕様検討⇒工法検討・工程設計⇒調達⇒試作、、、というように、いわゆるウォーターフォールモデルで、各段階が独立して活動を行っていました。しかし、このプロセスの問題点は設計仕様が一度決まってしまうと、品質向上の取り組みや工程最適化等の取り組みをすることが難しくなることにあります。 客先からの原価低減、短納期対応、品質保証の要求が厳しくなる中で概念として生まれてきたのが、SE検討(またはCE検討)です。SE検討では、設計開発段階から、調達や製造、生産技術、生産管理、検査・品質管理など各部門の担当者が積極的に入りこむため、製品開発~量産まで最適化することが可能になります。 特に近年のプレス量産分野では、ハイテン材や複雑形状製品等、従来の知見が通用しない難成型製品が増えているため、SE検討の重要性が高まっています。
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